アンプとスピーカーの組み合わせの注意点

安全と思われる組み合わせに潜む危険性

アンプとスピーカーの組み合わせを考えるとき、大切なスピーカーを壊さないようにとアンプの最大出力がスピーカーの許容入力を超えないように選んでいる方もいらっしゃるかと思いますが、 このような組み合わせでもスピーカーを破損することがあるのをご存知でしょうか?

例えば定格入力が50Wの2Wayスピーカーに定格出力20Wのアンプを組み合わせたとしてもアンプの出力でスピーカー(特にツイーター)を破損してしまう場合があります。

なぜか?
(坊やだからさ。。  うわ!何をするやめr・・)

アンプやスピーカーの測定は、定格でも最大でもミュージックでもロングタームMAXでも、全て「アンプが歪んでいない」という前提のもと行われています。
ところが、アンプは結構簡単に歪んだ状態に陥ります。
A級B級や、アンバランス/バランスにかかわらず、アナログアンプの出力はどんなに強力な電源や理想的な素子を持ってきても、電源電圧以上の振幅が取れません。
それ以上の振幅となる入力があると振幅が頭打ちになり、出力信号波形が「クリップ」してしまいます。
クリップした信号を周波数方向に分解すると、奇数次高調波がものすごい勢いで乗っていることがわかります。
(矩形波は、基本周波数の正弦波に奇数次の高調波を重ねることで実現できるとも言い換えられます。)
つまり、歪まない範囲で使っている分には問題は起きませんが、意図の有無は別にしてアンプがクリップすると、発生した高調波の電力がツイーターに集中することになります。
マルチウエイのツイーターの耐入力はスピーカーシステムとしての耐入力の数分の1であることがほとんどなので、スピーカーシステムの耐入力以下の出力しかないアンプでも、出力がクリップするとツイーター単体の耐入力を超えてしまい、ユニットを破損する。
という流れになります。

当然、一般的なスピーカーで20Wはほぼ爆音のレベルになるので通常の使い方で壊すようなことはまずありませんが、接続/操作ミスでフルボリュームとか、接続間違いで信号がループして発振したりなど異常な事態になると、スペック上は壊れるはずがない組み合わせであっても(より出力の大きいアンプなら歪まないのでスピーカーは壊れない状況であっても)出力の小さなアンプが歪んでしまうとスピーカーを壊すことがある。
ということになります。

大事なのは使い方です。

一般的に真空管アンプはボリュームが上がると歪みの増加が目立つようになるので、壊れるような出力になる前に気づけますが、ソリッドステートアンプはクリップ直前が一番性能が良いことがほとんどで、歪みに気づいた時点で手遅れとなる可能性がありますので、大音量域での使用には注意が必要です。

なお、高機能なアンプですと、クリップを緩やかにする(高調波の発生を抑制する)ソフトクリッピング回路が入っていたり、振幅をモニターして限界を超えそうになったら歪まないレベルまで自動的にゲインを下げる(ボリュームを下げたりアッテネーションしたりする)ものもあります。