小口径フルレンジでいこう

ワンルームでもスピーカーでちゃんと音楽が聴きた〜い

諸般の都合で事務所近くのワンルームマンションと自宅を行ったり来たりの生活になり、ワンルームでも音楽聴きたくて当初STEREO誌ムックのスピーカーを持って行ってましたが、どーにもこーにも自宅との違いにフラストレーションが溜まっていました。

そして増税という「この上ない言い訳」とともに駆け込みでスピーカーユニットを購入、併せて板材も調達してキャビネットを作りました。

ユニットは自宅のと同サイズのMarkAudioのAlpair7MS。
もともと薄いダンパーで振幅制限がかかりにくいMarkのスピーカーですが、これはダンパー自体がないダンパーレス。
サスペンションはゴムエッジだけです。
(型番のMSはモノ・サスペンションから来ています。)
細かいことを言えばリードワイヤーがボビンの保持に一役かってる模様ですが、振動系のダンパーとしてはほぼないに等しい状態です。
一昨年プロトタイプを聞いてからずっと欲しかったユニットです。

自宅はAlpair7v3に25Lオーバーの変形スリットポートバスレフでリビングの厚型テレビの横に置くこと前提のサイズでしたが、今度は狭いワンルームですので、壁ベタ付けで聴取距離と低域再生の底上げを狙います。
ただし、あんまりズンドコさせても近所迷惑なのと緩い低音も嫌なので、帯域(特に低域)レンジを伸ばしつつ内部構造を工夫してバスレフ臭さを抑止しようと思います。

Alpair7MSで私が欲しい特性を狙うとするとバスレフだと内容積25Lは必要です。
今回は床置き&壁ベタ付けなので、バッフル効果を最大限に引き出す薄いぬりかべ型にするか、細身のペンシル型にするか悩みましたが、板材の量(価格)が抑えられるペンシルタイプにしました。
椅子に腰かけた時の耳の高さにユニットを合わせて床から1050〜1100mmくらいに持ってきたいので、本体高は1200mmとして傾き調整と3点接地を兼ねたベースの上に乗せる形としました。
構造的には中仕切りを使ってポートに向かってキャビネットを絞り込んでいく形になるので、バスレフというより折りたたみ逆ホーン型のTLSといった方がいい感じです。
内容積(約27L)を使ったスリットポートバスレフとした時の共振周波数は40Hz前後、TLSとした時の気柱共鳴の共振周波数も40Hz前後になる計算です。
どちらにせよそのままだと共鳴ピークが強くなりすぎる(つまり緩くなる)のは目に見えていますので、吸音材でダンプしていきます。
使う板は自宅のスピーカーと同じ18mm厚のパイン集成材を直線カット無料の通販サイトで購入。

穴あけ、面取りは自前で処理します。
ドリルが手持ちなのでユニット取り付け用100mmφは自在錐ではなくホルソーで開けました。

リューターで面取りして貼り合わせていきます。

仮組み状態で吸音材の量をあらかた決めて接着。

サンダーで軽くサンディングして蜜蝋で表面保護して完成。



床置きで壁ベタ付けなので、配線はフロントからになります。
そのため、コネクターは一般的なスピーカーターミナルではなく、スピコンにしました。

組み上げて音楽かけたら思いのほか低音がバンバン出てきます。
というか、なんかバランスが変です。
トーンジェネレーターを使ってチェックしたら、70Hzあたりに大きいピークがあります。
さらに40Hz付近のレベルが期待したほど出ていません。
70Hz付近はユニットのF0であるとともに、折り返しまでの内のり高さ1164mmの気柱共鳴周波数(340/(4×1.164)=73)に近いです。
手抜きで内部の折り返し部分にスラントを入れなかったのため反射を招いた可能性が高いと判断。
せっかく綺麗に接着したんですが、底部を切断。
折り返しにスラントを作って抜けた底はベースに直接貼り付ける形で蓋をしました。
仕上がり寸法で高さが18mm低くなりましたが、かえって聴取位置にちょうどいい塩梅になりました。
併せて反射の影響が大きかったユニット側の吸音材を増やして更に共鳴を抑え、ポート側の吸音材はほとんどを抜いて低域の伸びとバランスを取るようにしました。
これで50Hz以下だら下がりの特性となりました。
周波数特性的にはもう少し50Hz以下の音圧レベルが欲しいところではありますが、感覚的にはレンジが程よく広がりながら締まった低音が感じられ、部屋が狭いのと壁ベタ付けも手伝ってボリューム小さめでもベースパートが把握しやすく、集合住宅ではこのくらいの方が安心できます。

バスレフとは違い、低音パートの音像がはっきりして引き締まった感じは個人的には大成功。
さらに、モノサス(ダンパーレス)ユニットは中高域の反応も素晴らしく、特にボーカルや小編成楽器にドキッとするほどのリアリティを感じたり、聞き慣れた楽曲でも「あれ?こんな音入ってた?」という発見がまたまた起きたりと、フルレンジ(シングルユニット)沼の深みにさらにズブズブとハマっています。

なお、一部でAlpair7MSは底付き(オーバーストローク)しやすいと言われていますが、ダンパーレスなのでその分の振幅制限がかからなく、通常のAlpair7、v2、v3と比べてもオーバーストロークしやすいのは「あたりまえ」です。
クルマに例えると、エンジンのピックアッップ(アクセル追従性)を改善するためにフライホイールを軽量化したら、吹け上がりが鋭くなり、すぐにレブリミットに達したりエンストしやすくなったりしますが、これもあたりまえのことですね。
特性の異なるユニットは全く同じ使い方はできません。
ちなみに、今回のキャビネットと私の使い方(ボリューム)では底付きは起きません。
(テラークの1812年をうるさいレベルまでボリュームをあげたらさすがに大砲で底付きしましたが、これは楽曲自体が特殊です)