光インターフェースの改善

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DACまたまた改造

アナログの極みの一端を経験したあと、何を思ったか中古のFireWireオーディオI/Fを入手しました。
で、例によって、 カップリングコンデンサーとデカップリングコンデンサーにフィルムコンデンサをパラに追加したり、ACアダプタではなく、バッテリーで動かしてたりしますが、そこは安物、もう一歩進めたい。

ワードクロック使うかと思ったんですが、入手した安物I/Fにはワードクロック入力がありません。
ただし、S/PDIF入力に追従する機能があり、これを活用されている方もいらっしゃるようです。
問題は、このI/FのS/PDIF入力が「光のみ」という点。

ワードクロック側に光のS/PDIF出力を持ってるものが見当たらないのと、同軸と光の変換は専用の変換モジュールを使うので技術的にはなんら難しいことはないのですが、本家の東芝がモジュールの製造販売やめてしまって入手難。
まさかTOSLINKモジュールがディスコンになるとは。。
ということで、いきなり暗礁に乗り上げました。
(まあ、探せば代替品もあるんですが。。)

ところで、オーディオ界隈では、光のS/PDIFはジッタが多くなりやすく、音がイマイチという「通説」があります。

ハード屋目線で言わせていただくと、基本的にS/PDIFには独立したクロック伝送ラインがなく、送られてきた信号タイミングからクロックを生成するという機能である以上、同軸だろうが光だろうが信号品質が劣化したらジッタが増えるに決まってる訳で、光だけが目の敵にされてるのはイマイチ解せません。
調べてみたら、TOSLINKモジュールのデータシートにある参考回路がアレで、そのまま使うと良質な単独電源でも用意しない限りは、そりゃ増えてもおかしくはないわな。。って感じの様です。

つまり、大多数の装置で採用されているであろう、デジタル系の電源を共用してTOSLINKモジュールに供給、かつモジュールの電源回路周りが参考通り。だと、ジッタが増えて当然ということです。

冒頭の写真がその参考回路図です。
オペアンプとかも、電源ピンの直近に0.1μFくらいのパスコン入れろ。ってよく書いてありますので、あまり気にしない方も多いかもしれません。
しかも、47μHのチョークまで入ってれば万全に見えなくもない。
これのどこが問題か。。

この回路を実際に組むとなると、マイクロインダクターとかチップインダクターのお世話になると思いますので、このモジュールの電源回路は、Lと直列に20Ωくらいの抵抗が入るLCR型のローパスフィルターが入っている事になります。
計算すると、ターンオーバー周波数が100kHzくらいです。
デジタル系で電源が共用されてると考えた場合、TOSLINKではサンプリング周波数が44.1kHz〜96kHzの信号を扱おう(規格外では〜200kHzも扱いますが)と言うのに、電源回路はその周波数帯域のノイズを遮断出来ないということになります。

これを強化するのは簡単ですね。
モジュールに単独で電源を用意するか、電源を共用するなら、Cの容量を増して、フィルターの遮断周波数をサンプリング周波数で充分効果があるところまで下げてあげればいいだけです。

実際にうちのDACやDDC、プレーヤー側のTOSLINKをチェックしてみました。

メインのDAC(MUSILAND)を見ますと、3.3V系のモジュールで、電源ラインにモジュール単独ではチョークコイルが入ってない様子。(モジュールによっては、参考回路にチョークのないものもありますので、これ自体は悪い訳ではありません。)
Macで使ってるDAC(Tempotec)は、5V系のモジュールで、モジュールに引き込む電源ラインに単独にチップインダクターのチョーク入り。
ただし、どちらもデジタル系電源から共用で供給されています。

DDCとNWプレーヤーのTOSLINKモジュールは、電源自体はデジタル系共用でしたが、モジュール専用のチョークと容量の大きなデカップリングコンデンサが搭載され、きっちり対策してありました。

と言う事で、中華DAC2つは改善の余地がありそうです。
MUSILANDの基板を手繰ると多層基板の中の方に電源ラインがあるらしく、このままチョークを追加する事が出来ませんが、3.3Vレギュレータ出力から離れており、電源ラインの抵抗値がある程度(数Ω)あるものとして、モジュールのピンに大きめの容量のデカップリングコンデンサをぶら下げれば40kHzで-40dB程度のCRフィルターは構成できそうです。
チョークを使ったLCRフィルターよりは遮断特性が劣りますが、現状の100kHzまでフィルター効果のないのからみれば100倍マシです。
Tempotecの方はモジュール電源ラインにチョークが入っているのですが、組み合わせるコンデンサの容量が参考回路通りパスコンなのでやはりサンプリング周波数では役立たず。
こちらもデカップリングコンデンサの追加で40kHzで-60dB程度のフィルターを構成します。

なお、今回使うコンデンサは、基板の裏に貼付けると言うスペースの制約と、最低限40kHz〜200kHzで有効な特性が必要な事から、容量は数10μFは欲しいので、選択の余地なく積層セラミック6.3V100μFの出番です。
(DCが掛かると実質容量が小さくなるタイプなので、出来る限り大きめの値にします。)
なお、タンタルは故障モードがショートなので、改造にはイマイチ使いたくなかったりします。

ところで、オーディオ界隈ではセラミックコンデンサが目の敵にされたりしますが、適材適所で考えるべきです。
オーディオ回路であっても、音がいいと有名なアンプにも普通に使われてたりします。
(私がみたものはパワーアンプの位相補正回路でMHz帯域のパスコンとして使われており、こちらもほぼ選択の余地なしです。)
素材信仰を闇雲に否定はしませんが、まずは所定の性能を出してからその次の議論をしていただきたく思います。

ちなみに、一部のマニアで有名な某製品。
「音質改善」を謳い、電源回路に後付けするもので、アナログ音声回路の電源部に直結するのにも関わらず、中の回路には積層セラッミックコンデンサが使われてました。
(フィルムコンデンサと言うもっぱらの噂でしたが、私が入手したものを分解して確認したら積セラでした。)
まあ、こちらはそもそも効果自体がかなり怪しいんですが、中身がセラミックだと知ったら、この製品に傾倒しているセラミック嫌いの某氏はどんな反応するんだろうか。。(苦笑)

で、我が方の改造結果ですが、まず、動作が安定しました。
オシロで見ててもモジュール出力信号のふらつきが減り、たまに192kHzで同期しなかったりしてましたが、それが無くなりました。(そもそもTOSLINK規定外ではあるのですが。。)
音の方も、CDプレーヤーの調整で「アイパターン」をきれいにした時に通じる、「静けさ」「空気感」「奥行き感」と言った感覚的なファクターに大きな改善が感じられました。

DDCの光出力モジュールにも試しましたが、元からちゃんと対策されていた事もあり、こちらは大きな変化は感じられませんでした。
(定位感が前よりよくなったかも。。と言う程度でした。)